資格スクールの案内には「受講料の20%が戻る」と書いてあり、会社にも自己啓発支援の制度があって受講料の半額を補助してくれる。両方を足せば自己負担はほとんど残らない、と計算した人が、あとから給付金の返還を求められることがあります。
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先に結論を書きます。教育訓練給付金の対象になるのは受講者本人が自分の名前で払った額だけです。会社が受講料に充てる目的で補助した分は、教育訓練経費から差し引いて申請しなければならないと国の手引に明記されています。差し引かずに申請すると不正受給にあたり、返還に加えて返還額の2倍の納付を命じられることがあります。ただし会社が立て替えて払った場合でも、3つの条件を満たせば本人が払ったものとして扱われます。
(2026年8月時点の制度に基づいています。給付率や上限は受講開始日によって変わるため、実際の適用は受講開始前にハローワークで確認してください。)
対象になるのは「本人が自分の名前で払った額」だけ
教育訓練給付金は、受講者本人が教育訓練の実施者に支払った入学料と受講料(最大1年分)を「教育訓練経費」として、その一定割合を支給する制度です。ここで効いてくるのが「自らの名において直接支払った」という条件で、支払った人が誰かによって結論が変わります。
本人と会社がそれぞれの名義で費用を分担して払った場合、給付の対象になるのは本人が払った額だけです。会社が払った分は、修了証明書の備考欄に「事業主等支払額」として記載されることになっています。つまり、会社が出したという事実はハローワークに伝わる前提で制度ができています。
会社から手当として出た場合は、その分を引いて申請する
会社の自己啓発支援には、受講料の請求書を会社に回す形と、本人が払ったあとで手当や補助金として支給する形があります。後者のほうが多いと思いますが、この場合も国の手引は手当のうち明らかに入学料または受講料に充てられる額は、教育訓練経費から差し引いて支給申請しなければならないと書いています。
ここで線を分けるのは「その手当が受講料に充てられるものか」です。受講料の半額を補助する制度なら、その半額は差し引きの対象になります。資格を取ったあとに支払われる資格手当のように、受講料と結びついていないものは性質が違います。
例を出します。受講料20万円の一般教育訓練で、会社が10万円を補助した場合、教育訓練経費は20万円ではなく10万円です。給付は10万円の20%で2万円になります。20万円で計算して4万円を受け取ると、差額の2万円が過大な受給になります。
会社が立て替えて払った場合の3つの条件
会社が実施者にまとめて振り込む「立替払い」でも、次の3つをすべて満たせば教育訓練経費として認められます。
- 本人が講座を実施者に直接申し込んでいること
- 会社が本人の使者として支払うもので、そのことについて書面での契約があること
- 会社への金銭の受け渡しについて、①支払い前に本人が全額を会社に預けている、または②書面の貸付契約があり、給与天引きなどで返済していること
②の貸付契約による場合、教育訓練経費として認められるのは支給申請をする前までに会社へ返済した額が上限です。分割で天引きされている途中なら、その時点までに返した分しか数えられません。会社が全額を出したように見えても、本人がそれを負担し終えていれば本人の支出として扱われる、というのが制度の考え方です。
逆に言えば、書面の契約がないまま口頭で「あとで給料から引くから」と処理していると、条件を満たしません。会社の制度が善意で運用されているほど、書面が省かれている可能性はあります。
領収書の名義が、最初の分かれ目になる
支給申請には、実施者が発行した本人あての領収書が必要です。会社あての領収書では申請できません。会社が窓口になって申し込みも支払いもまとめている場合、実施者は会社あてに領収書を出すのが自然なので、この時点で申請できない形が確定してしまいます。
会社の補助制度を使いながら給付金も受けたいなら、申し込みの前に「誰の名前で申し込み、誰あての領収書が出るのか」を確認しておくのが最短です。受講が始まってからでは、名義をさかのぼって直すことはできません。
自己負担がいくらになるかは、この名義の確認が終わって初めて確定します。金額が決まったら、それは動かせない支出として家計に先に組み込んでおくほうが、あとの計画は立てやすくなります。松井証券でNISA口座を開設する(iDeCoにも対応) →
差し引かずに申請すると、不正受給になる
会社の補助を差し引かずに申請した場合の扱いは重いです。偽りその他不正の行為で給付を受けた、または受けようとした場合、給付を受けられなくなるだけでなく、不正に受給した額の返還と、返還額の2倍の金額の納付を命じられ、刑罰に処せられることがあります。ハローワークの調査に虚偽の陳述をした場合も納付命令の対象になります。
さらに、不正に係る受講開始日前の被保険者だった期間はなかったものとみなされるため、以後しばらくは別の講座を受けても給付を受けられなくなります。雇用保険に入っていた年数がリセットされるという意味で、金銭以外の損も残ります。
スクール側が受講者に対して現金・書籍・パソコンの無償提供などで還元した場合も、実質的な値引きとして扱われ、還元後の実負担額が対象になります。「差し引く」対象は会社の補助だけではありません。
そもそも経費に入らないものがある
入学料と受講料以外は、思っているより入りません。次のものは教育訓練経費に含まれません。
- 検定試験の受験料
- 受講に必ずしも必要でない補助教材費、補講費
- 通学のための交通費
- パソコンなどの器材の費用(レンタル料も含まない)
- クレジット会社に対する手数料(分割の金利分)
- 支給申請の時点で未納になっている額
一方で、受講開始日前1年以内にキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けた場合、その費用を2万円を上限に経費へ加えることができます。合格までに払う総額のうち、給付の計算に乗る部分と乗らない部分を分けて見ておかないと、戻る額の見積もりは簡単にずれます。
戻る額は、講座の種類で3段階に分かれる
教育訓練給付は1種類ではありません。同じ「教育訓練給付金」でも、講座がどの区分に指定されているかで割合も上限も変わります。
| 区分 | 給付率 | 上限 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練 | 40% +資格取得・就職で10% |
20万円 +5万円 |
| 専門実践教育訓練 | 50% +資格取得・就職で20% +賃金5%上昇で10% |
年40万円 +年16万円 +年8万円 |
一般教育訓練は、計算した額が4千円を超えない場合は支給されません。受講料2万円の講座なら20%で4千円となり、この線に届きません。会社の補助を差し引いた結果として経費が小さくなると、ここに引っかかることがあります。
専門実践教育訓練の追加給付のうち、賃金が5%以上上がった場合の10%は、2024年10月1日以降に受講を開始した人が対象です。受講開始日が制度の適用を決めるため、開始のタイミングは金額に直結します。
なお、受講のために30日以上の無給の休暇を取る場合は、受講費用とは別に、休暇中の生活を支える教育訓練休暇給付金という制度があります。こちらは勤務先の就業規則に該当する休暇制度があることが前提で、要件も申請の書類も別になります。
申請の期限は「修了日の翌日から1か月」
一般教育訓練の支給申請は、実施者が証明した受講修了日の翌日から起算して1か月以内に、本人の住所を管轄するハローワークへ行います。この期限は短く、修了証明書と領収書がそろってから動くと間に合わないことがあります。
受給資格そのものにも条件があります。一般教育訓練の場合、雇用保険の被保険者期間(支給要件期間)が3年以上、初めて教育訓練給付金を受ける場合は1年以上必要です。また、過去に教育訓練給付金を受けたことがある場合、前回の受講開始日以降で3年以上を数え直すことになります。受講を決める前に、ハローワークの支給要件照会で確認しておくと空振りを避けられます。
まとめ
- 給付の対象は、本人が自分の名前で払った入学料と受講料(最大1年分)
- 会社が受講料に充てる目的で出した補助は、差し引いて申請しなければならない
- 会社の立替払いは、直接申込・書面契約・預けか返済済みの3条件を満たせば対象になる
- 会社あての領収書では申請できないため、申し込みの名義を先に確認する
- 差し引かずに申請すると、返還に加えて返還額の2倍の納付を命じられることがある
- 受験料・交通費・パソコン代・クレジット手数料は経費に入らない
- 一般教育訓練は20%・上限10万円で、計算額が4千円以下なら支給されない
よくある質問
Q. 会社の補助を受けたことを黙っていれば分かりませんか
本人と会社がそれぞれの名義で分担して払った場合、会社が払った額は修了証明書の備考欄に「事業主等支払額」として記載されます。本人がいったん全額を払って会社から手当として受け取る形なら、実施者が出す証明書には現れませんが、差し引いて申請する義務は変わりません。受講者への還付についてはハローワークが後日調査を行うことがあると案内されており、発覚した場合は返還額の2倍の納付と、被保険者だった期間の取り消しが伴います。
Q. 資格を取ったあとに出る資格手当も差し引きの対象ですか
差し引きの対象になるのは、手当のうち明らかに入学料または受講料に充てられる額です。受講料の補助として支給されるものは対象になります。判断が分かれる形の手当については、勤務先の規程の書き方を確認したうえで、ハローワークに事実を伝えて判断を仰ぐのが確実です。
Q. 会社が全額を払い、給与から天引きで返しています。対象になりますか
書面の貸付契約があることが前提で、教育訓練経費として認められるのは支給申請をする前までに会社へ返済した額が上限です。天引きが途中の段階で申請すると、その時点までに返した分しか計算に入りません。返済の完了と申請期限のどちらが先に来るかを、受講前に確認しておく必要があります。
Q. 受講料を分割払いにすると、手数料も対象になりますか
なりません。クレジット会社に対する手数料や金利分は教育訓練経費に含まれず、手数料が加算される前の正味の額が対象になります。分割にしたこと自体は問題ありませんが、支払総額と給付の計算に使う額は一致しません。

