配偶者手当が廃止されると手取りはどうなる?原資の振替先3つと、通知が来たら見る4か所

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「配偶者手当を見直します」という通知が社内に出たとき、最初に浮かぶのは月いくら減るのかという計算だと思います。月2万円なら年24万円。共働きで子どもの学費を積んでいる家庭にとっては、決して小さくない額です。

ただ、人事の側で制度を作る立場から見ると、廃止された手当の額がそのまま家計から消えるとは限りません。国が企業向けに示している見直しの手引きには、原資の扱いと経過措置についての留意点が書かれていて、実務はおおむねその線に沿って動きます。この記事では、廃止が決まってから給与に反映されるまでに何が起きるのか、そして通知が来たときにどこを見れば自分の家計への影響が読めるのかを説明します。

結論:手当の額がそのまま消えるとは限らない

厚生労働省が企業向けにまとめている「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」では、見直しを進める際の留意点として5つが挙げられています。従業員の納得性を高める取組、労使の丁寧な話合いと合意、賃金原資総額の維持、必要な経過措置、決定後の新制度についての丁寧な説明です。

このうち家計に直結するのが3つ目と4つ目です。手当をやめた分の原資を会社の利益に戻すのではなく、別の形で賃金として配り直すという考え方が示されており、実際に見直しを行った企業でも賃金原資の総額が維持されるよう制度が組み直されているケースが多いとされています。

つまり判断すべきなのは「いくら減るか」ではなく、「その原資がどこに振り替わったか」と「自分がその振替先に当てはまるか」です。

なぜいま、配偶者手当の見直しが増えているのか

背景にあるのは、いわゆる年収の壁です。厚生労働省の調査では、就業調整をする理由として「一定額を超えると配偶者の会社の配偶者手当がもらえなくなるから」を挙げた人が15.4%いました。社会保険の130万円(57.3%)や所得税の103万円(49.6%)ほどではありませんが、無視できない割合です。

そして令和7年度の税制改正で、所得税の扶養基準が103万円から123万円へ、配偶者特別控除が満額となる配偶者の給与収入の上限が150万円から160万円へ引き上げられました。税の側の壁が動いたのに、会社の手当の収入要件が古いままだと、そこだけが働き方を縛る壁として残ります。

会社側から見ると、この状態は人材確保の面でも不利になります。手当の見直しが進んでいるのは、こうした事情が重なっているためです。

人事の側では、廃止は3つの段階を踏む

ある日突然なくなることは、まずありません。順番が決まっています。

1. 労使の話し合い

手当の廃止は労働条件の不利益変更にあたるため、会社が一方的に決めて終わりにはできません。労働組合がある会社では組合との交渉、ない会社でも従業員代表との協議を経ます。この段階では社内に情報が出ないことが多く、決まってから知らされます。

2. 就業規則の変更と周知

賃金規程は就業規則の一部なので、変更したうえで従業員に周知する手続きが必要です。ここで初めて全社に文書が出ます。イントラネットへの掲示、説明会、給与明細への同封など、周知の方法は会社によって違います。

3. 施行日

周知から施行までには、たいてい数か月から1年の間隔が空きます。年度単位で賃金制度を動かす会社が多いため、4月施行、その前年の秋から冬に周知、というスケジュールが実務では最も多い形です。

逆に言えば、通知を受け取った時点で、家計を組み直す時間はある程度残されています。

振替先は、おおむね3つに分かれる

原資が維持される場合、どこへ移るかで影響が変わります。

ひとつは基本給に載せる形です。全員に等しく配分するか、等級ごとに配分します。配偶者のいない人にも回るため、配偶者手当を受け取っていた人にとっては、もらっていた額より戻ってくる額が小さくなります。

ふたつは子どもに関する手当への振替です。配偶者への支給をやめ、子ども1人あたりの加算を厚くする形で、近年の見直しではこの型が目立ちます。子どもがいる家庭では、差し引きでほぼ変わらない、あるいは増えることもあります。子どもの人数が多いほど有利になります。

三つは収入要件だけを外す形です。手当そのものは残し、「配偶者の年収が◯万円以下」という条件を撤廃または引き上げます。廃止ではないので家計への影響は小さく、むしろ配偶者が働く時間を増やせるようになります。

自分の会社がどの型かによって、家計への影響は増減どちらにも振れます。減る前提で計算を始める前に、通知の文面で振替先を確認するのが先です。

額面が同じでも、手取りが変わることがある

ここは見落とされやすいところです。振替の前後で額面の合計が同じでも、手取りは一致しないことがあります。

社会保険料の等級

家族手当は標準報酬月額の算定対象に含まれます。したがって手当が減れば報酬も下がり、等級が下がることがあります。等級が下がれば社会保険料も下がるため、額面の減少幅より手取りの減少幅は小さくなります。ただし同時に、将来の年金額の計算基礎も下がります。

基本給に振り替えられて総額が変わらない場合は、等級も変わりません。

割増賃金の算定基礎

労働基準法では、割増賃金(残業代)を計算するときの基礎から家族手当を除外できることになっています。ただしこれは、扶養家族の人数や有無に応じて支給されているものに限られます。全員に一律で支給されている手当は、名前が家族手当でも算定基礎に含める必要があります。

そのため、配偶者手当が廃止されて基本給に振り替えられた場合、その分は割増賃金の算定基礎に入ります。残業の多い人ほど、時間単価が上がって差が埋まる方向に働きます。

残業がほとんどない働き方の場合、この効果は期待できません。同じ制度変更でも、働き方によって着地が変わります。

経過措置で見落としやすい2つ

国の手引きでも「必要な経過措置」が留意点に挙げられており、多くの会社が何らかの緩和策を置きます。

ひとつは、段階的に減らす形です。初年度は全額、翌年は半額、その次の年にゼロ、といった刻み方をします。この場合、家計への影響が出るのは通知の年ではなく2年後、3年後です。通知を受けた年に一度計算して安心してしまうと、影響が出る年に備えが間に合いません。

ふたつは、現在受け取っている人だけを対象外にする形です。施行日時点で受給している人は据え置き、新たに要件を満たす人には支給しない、という運用です。この場合、いま受け取っている人の家計は変わりませんが、結婚や配偶者の退職などで新たに要件を満たしても、もう支給されません。ライフプラン上、将来の前提が変わります。

通知が来たら確認する4か所

社内文書と賃金規程で、次の4つを順に見ると影響が読めます。

1つ目は施行日です。いつの給与から変わるのか。年度途中なのか4月なのか。ここで家計の見直しに使える期間が決まります。

2つ目は振替先です。「原資は基本給に配分する」「子ども手当を増額する」といった記載があるかどうか。記載が一切なく廃止だけが書かれている場合は、説明会や人事への問い合わせで確認する価値があります。

3つ目は経過措置の有無と期間です。段階的な逓減なのか、現行受給者の据え置きなのか。何年で完全移行するのか。

4つ目は、自分が新制度の対象になるかです。子ども手当への振替であれば、子どもの年齢に上限(18歳まで、22歳までなど)が設定されているのが普通です。子どもがその年齢を超えた時点で、振替の恩恵も終わります。

減る前提で家計を組み直すときに

確認した結果、差し引きで実際に減ると分かった場合、まず見るのは固定費です。月々の手当が減るのに、支出の形をそのままにしておくと、削られるのはたいてい貯蓄と教育費の積立の側になります。

とくに保険は、子どもが生まれた時期に入ったまま何年も見直していない家庭が多い費目です。手当の廃止で世帯の収入構成が変わるなら、必要な保障額も一度計算し直す機会になります。自分で判断がつきにくければ、保険マンモスの無料相談のように、複数社の商品を横断して見てもらえる窓口で現状の契約を点検してもらう方法もあります。

そのうえで、振替先が子ども手当だった場合は逆の判断になります。子どもの人数によっては手取りが増えるため、増えた分をそのまま生活費に溶かさず、教育費の積立に回す設計にしておくと効きます。

まとめ

配偶者手当の廃止は、手当の額がそのまま家計から消える話とは限りません。国が示す留意点には賃金原資総額の維持と経過措置が含まれており、実務では原資が基本給や子ども手当に振り替えられることが多くあります。

影響の大きさを決めるのは、振替先がどこか、経過措置が何年か、そして自分がその振替先の対象になるかの3点です。額面が同じでも、社会保険料の等級と割増賃金の算定基礎の扱いによって手取りは前後します。

通知が来たら、施行日・振替先・経過措置・対象範囲の4か所を順に確認してください。影響が出るのが2年後、3年後という設計になっていることも珍しくないため、通知の年に一度計算しただけで終わらせないことが大切です。

よくある質問

Q. 配偶者手当の廃止は、会社が勝手に決められるのですか

賃金規程の変更は労働条件の不利益変更にあたるため、労使の話し合いを経る必要があります。国の手引きでも、従業員の納得性を高める取組と労使の丁寧な話合い・合意が留意点に挙げられています。ただし合意が得られない場合の取り扱いは事案ごとに判断が分かれるため、疑問がある場合は労働組合や労働基準監督署に相談する経路があります。

Q. 廃止された分は、必ずどこかに振り替えられますか

必ずではありません。国が示しているのは賃金原資総額の維持が望ましいという考え方であって、義務ではありません。ただし見直しを行った企業では原資が維持される形が多いとされているため、通知に振替先の記載があるかをまず確認するのが実務的です。

Q. 手当が減ると、将来の年金も減りますか

家族手当は標準報酬月額の算定対象に含まれるため、報酬が下がって等級が下がれば、その期間の年金の計算基礎も下がります。ただし基本給などに振り替えられて総額が変わらない場合は、等級も変わりません。

Q. 子ども手当に振り替わりました。うちは得になりますか

子どもの人数と年齢によります。子ども1人あたりの加算が厚くなる形なので、子どもが複数いる家庭では増えることがあります。一方で子ども手当には年齢の上限が設定されているのが普通なので、上限を超えた後は支給が終わる点も含めて計算してください。

Q. 配偶者の働き方を変えたほうがいいですか

手当の収入要件を理由に就業時間を抑えていたのであれば、要件がなくなる分だけ選択肢は広がります。ただし社会保険や税の壁は別に残っているため、そちらの基準も合わせて確認する必要があります。手当だけを見て働き方を決めると、別の壁に当たることがあります。

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出典

  • 厚生労働省「『配偶者手当』の在り方の検討に向けて(実務資料編)」令和7年4月改訂版
  • 厚生労働省「配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?」

大手企業の人事として、給与計算・社会保険・人事システムの導入を担当してきました。標準報酬月額や扶養、育児休業の給付など、家計に直結する制度を運用する側から見てきた立場です。家庭では未就学児2人を育てる共働き世帯で、保育料や教育費は自分ごととして計算しています。制度の話は自治体の要綱や省庁の一次情報にあたり、金額は自分の家計で確かめた範囲で書いています。

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