共働きで子どもが生まれると「どちらの扶養に入れますか」と聞かれます。ここで混乱しやすいのは、「扶養」と呼ばれているものが3つあり、それぞれ決め方が別だからです。税の扶養、健康保険の被扶養者、勤務先の家族手当。この3つは同じ人に揃える必要がありません。
※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれます。
人事として扶養の認定を処理してきた側から、3つの違いと、どの順番で決めるのが実務的かを整理します。
「子どもの扶養」は3種類ある
| 決めるのは | 判断基準 | 選べるか | |
|---|---|---|---|
| 税の扶養 (所得税・住民税) |
自分(申告) | 生計を一にしていること | 選べる |
| 健康保険の被扶養者 | 健保組合・協会けんぽ | 原則として収入が多い方 | ほぼ選べない |
| 家族手当(扶養手当) | それぞれの勤務先 | 会社の規程による | 規程次第 |
3つとも「扶養」という言葉を使うので、どれか1つを決めれば全部そこに揃うと思われがちですが、実際は別々に決まります。税は父、健保は母、という組み合わせも成立します。
健康保険は、原則として収入が多い方
夫婦がともに会社員で、どちらの健康保険にも入れられる場合、認定の考え方は通知で整理されています。
- 原則として、年間収入が多い方の被扶養者とする
- 年間収入の差がおおむね1割以内なら、届出をした方の被扶養者とする
- ここでの年間収入は、過去の実績だけでなく、今後1年間の見込みで判断する
ここは選択の余地がほとんどありません。申請の際には、配偶者の収入がわかる書類(源泉徴収票や課税証明書)の提出を求められることが多く、組合によっては毎年の定時確認で同じ書類を出し直します。共働きだと「相手の会社の書類を毎年もらう」という手間が発生します。
年度の途中で収入が逆転した場合、その都度切り替えるわけではなく、定時確認のタイミングで見直すのが一般的です。育休で一時的に収入が下がった年も、すぐに入れ替えにはなりません。
税の扶養は、乳幼児だと控除額がゼロ
ここが最も誤解されている部分です。16歳未満の子どもは扶養控除の対象外で、扶養親族として申告しても所得税の控除額は増えません。児童手当の導入時に、年少扶養控除が廃止されたためです。
ではどちらに入れても同じかというと、そうとも限りません。住民税の非課税限度額の判定では、16歳未満の子どもも扶養親族の人数に含まれます。 扶養親族が多いほど非課税になる収入のラインが上がるしくみなので、夫婦の一方がパートなどで収入を抑えている場合、収入が少ない方の扶養親族にすることで、その人の住民税が非課税になることがあります。
非課税限度額の金額は自治体(級地)によって違うので、判定ラインは住んでいる市区町村の基準で決まります。世帯の収入がどちらも十分にある場合は、この論点は効きません。
なお、扶養控除等申告書に子どもを記載する欄は、16歳未満は「住民税に関する事項」として別枠になっています。ここが空欄のままになっている申告書は実際によく見かけます。年末調整全体の流れは2026年の年末調整で共働き世帯が確認すべきことにまとめました。
家族手当は、勤務先の規程がすべて
金額の影響が一番大きいのは、実はここです。月1万円の家族手当なら年12万円で、税の控除より効きます。
要件は会社ごとに違いますが、共働きで問題になるのは次の2点です。
- 健康保険の被扶養者であることを要件にしているか。この形式を取る会社は多く、その場合は健保の認定に自動的に引っ張られます
- 配偶者が同種の手当を受けていないことという要件。夫婦それぞれの会社から二重に受け取ることはできません
重複して受給していたことが後から判明すると、遡って返還を求められます。人事の実務では、これは決して珍しい事案ではありません。夫婦それぞれの就業規則・給与規程で、家族手当の支給要件を先に確認するのが手戻りのない順番です。
決める順番
- 双方の勤務先の家族手当を調べる。金額と、健保の被扶養者要件があるかどうか
- 健康保険の認定基準に当てはめる。原則は収入が多い方。手当が健保連動なら、ここでほぼ確定する
- 税の扶養を決める。乳幼児なら控除はないので、住民税の非課税判定に効く場合だけ考慮する
多くの共働き世帯では、1と2でほぼ決まります。3で悩む余地があるのは、夫婦の収入差が大きい場合に限られます。
どちらの健康保険に入れるかを決める作業は、世帯の保障を確認する機会でもあります。健保が変われば、傷病手当金や付加給付の内容、団体保険の加入条件も変わります。勤務先の制度でどこまでカバーされているかが把握できていない場合は、保険マンモスの無料相談で公的保障の範囲を確認する →と、不足している部分だけを切り分けられます。
扶養で変わらないもの
- 児童手当:受給者は原則として生計中心者ですが、支給額そのものは扶養の入れ方では変わりません。制度の現状は児童手当の記事で扱っています
- 子どもの医療費助成:自治体の制度なので、どちらの健康保険に入っていても助成の対象です。詳細は子どもの医療費助成は自治体でどう違うかへ
- ふるさと納税の上限:16歳未満の子どもは控除額に影響しないため、上限額の計算に入りません。共働きの上限は共働き夫婦のふるさと納税の上限で計算方法を書いています
親側の保障も同時に確認しておく
親側にどれだけの保障が必要かの考え方は子どもが生まれたら生命保険はいくら必要かにまとめています。
よくある質問
税と健康保険で、扶養する人が違っても問題ありませんか
問題ありません。制度が別なので、それぞれの基準で決まります。税は父、健康保険は母、という状態でも手続き上の不整合にはなりません。
子どもが2人いる場合、1人ずつ分けられますか
税の扶養は分けられます。健康保険は、夫婦共同扶養の考え方から原則として同じ方にまとめる運用が一般的で、分けたい場合は健保組合への確認が必要です。家族手当は人数で加算される会社が多いため、分けると合計額が変わることがあります。
育休中は扶養を入れ替えたほうがいいですか
育休中の収入減は一時的なものとして扱われるため、通常は入れ替えません。育児休業給付金は非課税なので税の判定にも影響しません。長期にわたって収入の順位が変わる場合は、定時確認のタイミングで健保組合に相談するのが現実的です。
育休を取る予定があるなら、2025年に始まった上乗せ給付の要件も先に確認しておくと安全です。詳しくは出生後休業支援給付金がもらえないケースにまとめました。
まとめ
- 「子どもの扶養」は税・健康保険・家族手当の3つがあり、それぞれ別に決まる
- 健康保険は原則として収入が多い方。差が1割以内なら届出をした方
- 16歳未満は扶養控除の対象外。ただし住民税の非課税限度額の判定には人数が効く
- 金額の影響が大きいのは家族手当。健保の被扶養者であることを要件にする会社が多い
- 調べる順番は、家族手当の要件 → 健康保険の認定 → 税の扶養
あわせて読みたい
出典
本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な解説です。健康保険の認定基準は保険者ごとに、住民税の非課税限度額は自治体ごとに異なります。個別の判断は勤務先の担当部署、加入している健康保険、お住まいの市区町村にご確認ください。詳しくは免責事項をご覧ください。

