2025年10月に始まった教育訓練休暇給付金は、30日以上の無給の休暇を取って学び直す間、失業手当と同じ計算で決まる日額を受け取れる制度です。もらえる額の目安を計算し、受ける講座も決めて、いざ勤務先に申し出たところで止まってしまう人がいます。
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先に結論を書きます。この給付金は、勤務先の就業規則等に「業務命令によらない・連続30日以上・無給」の休暇制度がなければ、本人がどれだけ要件を満たしていても申請できません。ハローワークは事業主から提出された就業規則の写しでこれを確認します。ただし、その休暇は「教育訓練休暇」という名前である必要はなく、サバティカル休暇のように使途を定めない休暇制度でも対象になります。
(2026年8月時点の制度に基づいています。以下は厚生労働省の業務取扱要領・令和8年4月版の内容です。実際の適用は、休暇を始める前にハローワークが窓口になります。)
制度がない会社では、本人の要件を満たしていても申請できない
この給付金の手続きは、本人の申請から始まりません。順番は次のとおりです。
- 本人が休暇の期間・目標・内容・実施方法を明らかにして、事業主の承認を得る
- 事業主が、休暇開始日の翌日から起算して10日以内に、賃金月額証明書をハローワークへ提出する
- ハローワークが賃金の支払状況とあわせて、就業規則等に該当する休暇制度があるかを確認する
- 確認できた場合に限り、ハローワークが事業主へ賃金月額証明票(本人手続用)と支給申請書を交付する
- 事業主がそれを本人に渡し、本人がハローワークへ申請する
本人が使う申請書は、事業主を経由してしか手に入りません。制度の有無を確認する工程が3番目に入っているため、休暇制度がない会社では4番目に進まず、本人の手元に用紙が来ないまま止まります。雇用保険の加入年数や講座の内容は、その先で見られる話です。
電子申請で書類の照合を省略できる事業主の場合でも、教育訓練休暇制度が規定された就業規則等だけは省略できないと要領に明記されています。ここは必ず現物が見られる工程です。
就業規則が満たすべき3つの条件
ハローワークが就業規則の写しで確認するのは、次の3点です。
| 条件 | 対象になる書き方 | 対象にならない書き方 |
|---|---|---|
| 取得のきっかけ | 労働者本人が自ら希望して取得する | 業務命令で受講する場合の休暇に限られている |
| 日数 | 連続30日以上を取得できる | 30日未満の休暇制度しかない |
| 賃金 | 無給で取得できる | 有給の休暇制度に限られている |
3つのうち1つでも欠けると対象外です。とくに見落としやすいのが3番目で、会社が善意で有給にしている制度は、この給付金の対象にはなりません。給付金は休暇中に賃金が出ないことを前提に、その間の生活を支える設計になっているためです。
なお、本人がその休暇制度の対象者かどうかが就業規則だけでは分からない場合、ハローワークは雇用契約書などをもとに確認します。制度が正社員だけを対象にしている場合などは、ここで結論が変わります。
「教育訓練休暇」という名前の制度でなくてもよい
要領には、業務命令によらない教育訓練に利用できる無給の休暇制度について、必ずしも教育訓練に使途を限定したものであることは求めないと書かれています。使途を定めない休暇制度であって、教育訓練のために利用が可能になっているもの(サバティカル休暇制度など)でも差し支えない、という扱いです。
ここが実務上いちばん効きます。「うちにリスキリング休暇なんて無い」と思っている会社でも、長期の無給休職制度や自己啓発のための休職制度が別の名前で残っていることがあります。名前で探すと見つからないので、休暇・休職の規定を「業務命令によらない/連続30日以上/無給」の3条件で読み直すほうが早く着きます。
制度が労働協約に定められている場合は、その労働協約だけの提出で足ります。また、常時雇用する労働者が10人未満で就業規則の届出義務がない事業所では、事業主と労働組合等の労働者代表が連名で作成した申立書を添えることで代替できます。小さな会社だから使えない、ということはありません。
いま制度がない会社では、いつから使えるようになるか
会社に頼んで規定を作ってもらう場合、順番が決まっています。要領では、次の3つがこの順に並んでいることが必要とされています。
- 就業規則の労働者への周知および労働基準監督署への届出日(届出が義務づけられている場合)
- 就業規則等の施行日(または改定日)
- 教育訓練休暇開始日
つまり、規定ができた日と休暇を始める日が同じ、あるいは休暇が先に始まっている形では要件を満たしません。周知と届出を済ませ、施行日を迎えてから休暇に入る必要があります。会社側の稟議と労使手続きにかかる時間を考えると、今日思い立って来月から、という日程では組めない制度です。
講座の申込期限が先に来る場合、順番としては規定の整備が先です。講座を先に押さえてから会社に相談すると、施行日が受講開始に間に合わず、給付金だけが受けられないという形になりかねません。
会社に制度があるか、いつから使えるかが決まると、無給になる期間の長さと、その間に必要な現金が同時に確定します。30日以上の無給が確定した時点で、その期間の固定費と保障の形は先に整理しておくと、休暇に入ってからの判断が減ります。
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受け取れる日数と金額は、雇用保険の加入年数で決まる
会社側の条件を越えたあとに、本人側の要件が見られます。支給を受けるには次の2つが必要です。
- 休暇開始日前の2年間に、みなし被保険者期間が通算12か月以上あること
- 休暇開始日の前日において、算定基礎期間が通算5年以上あること
2年間に12か月という部分は失業手当と同じですが、加入5年以上という条件は失業手当にはありません。転職直後の人はここで外れることがあります。ただし、いまの勤務先だけで足りない場合も、前の勤務先での加入期間を通算できることがあります。前の離職票で失業手当を受けていないことが前提で、離職から次の加入までの空白が1年を超えていると、それより前は通算されません。
所定給付日数は算定基礎期間だけで決まり、年齢や離職理由による差はありません。
| 算定基礎期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
日額の計算は失業手当と同じで、休暇開始日の前日から遡って直近の完全な賃金月6か月に支払われた賃金の総額を180で割り、そこから年齢に応じた給付率をかけます。この給付金を受けられる期間(受給期間)は、原則として休暇開始日から1年です。
支給は30日ごとの認定を経て行われます。休暇開始日から30日ごとに認定日が指定され、その日に教育訓練休暇取得認定申告書を提出します。やむを得ない理由がある場合は認定日から7日以内まで認められますが、それも過ぎると直前の30日分は認定できず、遡って支給することもできません。ただし所定給付日数そのものは減らないため、受給期間が残っていれば、その日数を後の休暇で使うことはできます。
受け取ると、それまでの雇用保険の加入期間が一度リセットされる
この制度でいちばん重い条件は、金額でも日数でもありません。教育訓練休暇給付金の支給を受けると、休暇開始日より前の被保険者であった期間が、失業手当の受給資格を判定する被保険者期間にも、所定給付日数を決める算定基礎期間にも含まれなくなります。新しい加入期間は休暇開始日から数え直しになります。
失業手当を受けるには原則として離職前2年間に12か月の被保険者期間が要るので、復帰してすぐに自己都合で辞めると、その要件を満たせない可能性があります。学び直して転職する、という順序を考えている場合、この点が計画そのものを左右します。
ただし、消えるのは失業手当まわりだけです。要領では、育児休業給付・介護休業給付のみなし被保険者期間と、教育訓練給付金の支給要件期間の算定対象には含まれると明記されています。休暇のあとに育休に入る場合や、続けて指定講座を受けて教育訓練給付金を申請する場合まで巻き込まれるわけではありません。
ただし、6か月以内の倒産・解雇には特例がある
リセットには救済が用意されています。教育訓練の期間中、および教育訓練休暇を終了した日から起算して6か月以内に、倒産・解雇等により離職した場合は、特例として失業手当を受けられます。所定給付日数は90日(就職が困難な人は150日)です。
このとき賃金日額は、休暇開始日より前の賃金月も含めて計算されます。休暇中は賃金がないので、その期間だけで計算されると日額が下がってしまいますが、そうはならない仕組みです。
有期契約の雇止め(更新を希望したのに合意に至らなかった場合)も、令和9年(2027年)3月末までの暫定措置として同じ扱いの対象になります。
整理すると、リセットが効くのは自分の意思で辞めたときで、会社側の都合で切られた場合の穴は塞がれています。復帰後の身の振り方を考えるときは、この6か月という線が判断の分かれ目になります。
休暇中に、支給が止まる場面
認定は1日単位で行われ、次に当たる日は認定されません。
- 自己の労働等によって収入を得た日。雇用契約による労働に限らず、自営業、他人の仕事の手伝い、有償ボランティアを含みます。就労時間は問われず、1時間でもその日は不認定です
- 教育訓練以外を目的とする休暇・休業を取得した日。育児休業、介護休業、病気休暇、有給休暇、産前産後休業などが該当し、手当や給与が出ているかどうかは問われません
収入があった日は不認定になるだけで、金額に応じて減額されるわけではありません。日単位で丸ごと落ちる形です。
会社からのお金については、線の引かれ方が2通りに分かれます。受講料や受験料の補助として出る手当は、就労の対価ではないので「収入」に当たりません。一方で、休暇中の生活費補助として手当を出すと、そもそも「無給の休暇」を取得したといえなくなり、給付金自体が支給されません。会社が良かれと思って出した生活費補助が、給付金を丸ごと消してしまうことがある、という形です。
受講費用そのものに対する補助の扱いは、教育訓練給付金は会社の補助と併用できるかのほうで整理しています。休暇に対する給付とは別の制度で、経費の数え方も申請先の書類も分かれています。
このほか、解雇・雇止め・休業が予定されている人は、そもそも対象教育訓練休暇を取得できません。予定がないことは事業主が賃金月額証明書の欄で届け出る形になっており、虚偽の届出は罰則の対象になる場合があると要領に書かれています。産前産後休業を中断して教育訓練休暇を始めることもできません。
まとめ
- 勤務先の就業規則等に該当する休暇制度がないと、本人の要件を満たしていても申請書が手元に来ない
- 就業規則が満たすべきは「業務命令によらない」「連続30日以上」「無給」の3条件
- 制度の名前は問われず、サバティカル休暇など使途を定めない休暇制度でも対象になる
- いま制度がない場合、周知・届出 → 施行日 → 休暇開始日の順を踏む必要があり、直前の申し出では間に合わない
- 本人側の要件は「前2年間に12か月」に加えて「加入5年以上」で、失業手当より1つ多い
- 所定給付日数は加入年数だけで決まり、90日・120日・150日の3段階
- 受給すると休暇開始日前の加入期間が失業手当の判定から外れるが、育休給付と教育訓練給付には残る
- 休暇終了から6か月以内の倒産・解雇には、失業手当90日の特例がある
- 休暇中に1日でも就労して収入を得ると、その日は不認定になる
よくある質問
Q. 会社に「教育訓練休暇」という名前の制度がありません。使えませんか
名前は問われません。使途を定めない休暇制度であっても、業務命令によらず教育訓練のために利用でき、連続30日以上を無給で取得できる形になっていれば対象になります。サバティカル休暇制度が例として挙げられています。逆に、業務命令で受講する場合の休暇制度、30日未満の休暇制度、有給の休暇制度に限られている場合は対象になりません。就業規則を制度の名前ではなく、この3条件で読み直すのが確実です。
Q. 大学や専門学校でなくても対象になりますか
原則として、学校教育法に基づく大学・大学院・短期大学・高等専門学校・専修学校・各種学校が提供する教育訓練か、教育訓練給付金の講座指定を受けた実施者が行う教育訓練が対象です。ただしそれ以外でも、本人の疎明をもとにハローワークの長が制度の趣旨に合致すると確認したものは対象になります。要領では、司法修習・語学留学・海外大学院での修士号の取得が具体例として挙げられています。
Q. 休暇を分けて取ることはできますか
できます。受給期間内で支給残日数が残っていれば、取得の回数に制限はありません。ただし1回ごとに連続30日以上である必要があり、そのつど事業主の承認を得て、休暇の期間などを明らかにした書類を出し直すことになります。分割した場合の認定日は、新しい休暇の開始日から30日ごとに設定し直されます。
Q. 教育訓練給付金と両方受け取れますか
受け取れます。休暇の期間中に指定講座を受講して教育訓練給付金の支給を受けることは可能だと要領に明記されています。受講費用に対する給付と、休暇中の生活に対する給付で、性格が違う2つの制度です。ただし要件も申請の書類も別なので、どちらか一方の手続きを済ませればもう一方も通る、という関係ではありません。

