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2026年10月から、社会保険の加入要件のうち賃金要件(月8.8万円)が撤廃されます。週20時間以上働いていて、従業員51人以上の会社に勤めている人は、年収がこれまでの壁を下回っていても加入対象になります。
手取りが減る話としては何度も報じられていますが、その先はあまり書かれていません。社会保険料は全額が所得控除になるため、翌年の住民税の所得割額が下がります。保育料の階層はその所得割額で決まっているので、0〜2歳児クラスの子どもがいる世帯では、保育料が下がる方向に動きます。
ただし効き始めるのは加入した年ではありません。ここでは、何年後のどの月から、どのくらい動くのかを、順を追って整理します。
保育料の階層は、世帯の市町村民税所得割額で決まる
認可保育園の保育料は、父母それぞれの市町村民税所得割額を合計した金額で階層が決まります。年収そのものではなく、控除を引いたあとの税額で判定される仕組みです。
そして参照する年度が年の途中で切り替わります。4月分から8月分までは前年度、9月分から翌年3月分までは当年度の所得割額です。この切替が、9月に保育料が動く理由になっています。詳しくは保育料が9月に上がるのはなぜ?で扱っています。
社会保険料は全額が所得控除になる
給与から引かれる健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分は、社会保険料控除として全額が所得から差し引かれます。医療費控除のように下限があるわけでも、上限があるわけでもありません。
年収110万円のパートを例にすると、給与所得控除を引いたあとの所得は55万円です。住民税の基礎控除43万円を引くと課税所得は12万円で、所得割の税率10%をかけると所得割額は約12,000円になります。
ここに社会保険料控除が加わると、課税所得はゼロになります。年収110万円台で社会保険に加入した場合、本人側の所得割額は数千円から1万数千円下がり、多くの場合ゼロに近づきます。
ただし、2026年10月の賃金要件撤廃で新しく加入対象になるのは、月8.8万円未満、年収でいえば約105万円を下回る層です。この年収帯はもともと所得割額が小さく、多い人でも数千円しかありません。下がる幅が大きいのは、すでに加入対象だった年収106万円以上の層のほうです。新しく対象になる層では、保育料への影響はあってもわずかだと考えたほうが実態に合います。
効き始めるのは、加入した年ではない
住民税は前年の所得に対して課され、その年度の税額が保育料の判定に使われます。この二段構えのせいで、時間差が生まれます。
| 時点 | 起きること |
|---|---|
| 2026年10月 | 社会保険に加入。手取りが減り始める |
| 2027年6月 | 2026年分の所得にもとづく住民税が決まる。10〜12月の3か月分の社会保険料が控除される |
| 2027年9月分 | 保育料の判定が2027年度の所得割額に切り替わる。ここで初めて反映される |
| 2028年9月分 | 2027年の丸1年分の社会保険料が反映され、下がり幅が最大になる |
2026年10月に加入しても、その年の保育料は動きません。最初に効くのは2027年9月分で、それも3か月分の保険料しか入っていないため幅は小さくなります。丸1年分が効くのは2028年9月分からです。
この2年遅れの構造は、育休から復帰した世帯で保育料が跳ね上がるのと同じ仕組みです。方向が逆なだけで、時間の流れ方は変わりません。
階層の境目に届かなければ、金額は動かない
所得割額が下がっても、保育料は連続的には下がりません。自治体の階層表は区分で区切られていて、区分をまたいで初めて金額が変わります。
世帯の所得割額が区分の下限をわずかに超えている場合は、1万円前後の低下でも区分が一つ動くことがあります。区分の真ん中にいる場合は、同じ低下でも金額は変わりません。下がるかどうかは、いま自分の世帯が区分のどこに位置しているかで決まります。
自分の世帯の所得割額は、住民税の決定通知書または特別徴収税額の通知書で確認できます。自治体の階層表と突き合わせれば、次の区分の境目までいくら余裕があるかが分かります。
配偶者側の税額が上がって相殺されないか
保育料は世帯合算で判定されるため、片方が下がっても片方が上がれば意味がありません。実際、配偶者控除や配偶者特別控除が減れば、もう一方の所得割額は上がります。
ただし住民税では、配偶者の合計所得金額が95万円以下、給与収入でいえば150万円までは配偶者特別控除が満額のまま適用されます。賃金要件の撤廃で社会保険に入る層の年収帯は、多くがこの範囲に収まります。この場合、配偶者側の所得割額は変わらず、相殺は起きません。
年収が150万円を超えると控除が段階的に減り始めるため、そこからは世帯合算で見ないと判断できなくなります。年収を150万円台まで伸ばすかどうかは、保育料の観点からは分かれ目のひとつです。
働く時間をどこまで増やすかを決める前に、手取りと保育料を含めた世帯全体の収支を一度並べておくと、判断の材料がそろいます。
3歳児クラスに上がると、この話は終わる
幼児教育・保育の無償化により、3歳児クラス以上の保育料は所得にかかわらず無料です。したがって所得割額が保育料に効くのは、0歳児クラスから2歳児クラスまでの期間に限られます。
下の子が2歳児クラスのうちに社会保険へ加入した場合、効果が出る2027年9月や2028年9月には、すでに無償化の対象になっている可能性があります。この場合、保育料の低下を加入の判断材料に入れる意味はほとんどありません。
一方で延長保育料や副食費は無償化の対象外で、階層区分によって金額や免除の可否が決まります。3歳以降も所得割額がまったく効かなくなるわけではありません。
なお、加入対象になるかどうかの判定そのものは、年収では決まりません。契約上の週の所定労働時間と、勤務先の法人全体で数えた人数で決まります。2026年10月から月8.8万円未満でも社会保険に入る人が出る|対象かどうかは年収ではなく、週20時間と勤務先の人数で決まるで条件ごとに分けて説明しています。
手取りが減る幅そのものは、別の話として残る
ここまでは翌々年に効く話です。加入した月から実際に手取りが減る幅と、そのタイミングは別に見ておく必要があります。社会保険に加入すると手取りはいつから減るのかで扱っています。
また、加入対象になるかどうかの要件そのものはパートの扶養内はいくらまで?2026年の年収の壁で整理しています。
まとめ
- 保育料の階層は、父母の市町村民税所得割額の合計で決まる
- 社会保険料は全額が所得控除になるため、翌年の所得割額が下がる
- 下がる幅が大きいのは年収106万円以上の層で、賃金要件撤廃で新たに入る層では幅が小さい
- 2026年10月に加入した場合、最初に効くのは2027年9月分の保育料
- 丸1年分が反映されるのは2028年9月分から
- 階層の区分をまたがなければ金額は動かない
- 給与収入150万円までは配偶者特別控除が満額のため、世帯合算での相殺は起きにくい
- 3歳児クラス以上は無償のため、効くのは0〜2歳児クラスの期間だけ
よくある質問
Q. 2026年10月に社会保険へ入ったら、その年の保育料は下がりますか
下がりません。保育料の判定に使われるのは前年の所得にもとづく住民税額で、2026年10月からの保険料が反映されるのは2027年度の住民税です。保育料に反映されるのは2027年9月分からになります。
Q. どのくらい下がりますか
階層の区分をまたぐかどうかで変わります。年収110万円台で加入した場合、本人側の所得割額は1万円前後下がりますが、世帯の合計額が区分の境目を越えなければ保育料は変わりません。自治体の階層表で、いまの位置と次の境目までの差を確認すると見当がつきます。
Q. 社会保険料控除は年末調整で申告が必要ですか
給与から天引きされている分については、会社が把握しているため申告は要りません。自分で払った国民年金保険料などがある場合は、年末調整で申告することで控除されます。
Q. 扶養を外れると、配偶者の住民税は上がりませんか
住民税の配偶者特別控除は、配偶者の給与収入が150万円までは満額のまま適用されます。この範囲であれば配偶者側の税額は変わりません。150万円を超えると段階的に減っていきます。
Q. 延長保育料も下がりますか
延長保育料は無償化の対象外で、階層区分に応じた金額を設定している自治体があります。区分が動けば延長保育料も変わる可能性がありますが、一律の金額としている自治体もあるため、お住まいの自治体の案内で扱いが分かれます。

